「夜のクラゲは泳げない」第9話を見て
「夜のクラゲは泳げない」第9話『現実見ろ』を見ました。
インターネットお絵かきマンの目線で光月まひるというキャラクターが(メンタル的に嫌な方向で)ぶっ刺さってしまったので、思ったこと・感じたことを書き下します。
「光月まひる」というキャラクター
これまで「光月まひる」というキャラクターは
- 確固たる目標がなく、花音に言われれるがままJELEEとして活動を続ける程度の主体性
- イラストレーターとしての漠然とした承認欲求や自己肯定感の低さ
- 自分より"いいね"がついたイラストに対して激しく嫉妬するほどのエゴ
という、かなりコテコテの「イマドキSNSお絵描きヤングウーマン」として描かれていたと思います。
そんなまひるがJELEEの活動を通じて「もっと上手くなりたい」と初めて"自我"のようなものに芽生えたのがこれまでのお話でした。第7話では美大への進学も表明しています。
花音と花音母
そんなまひるの前に
- 10万人達成して浮かれた発言を繰り返し、漠然とした賞賛を投げかける花音
- イラストの"粗"を的確に指摘しつつ、一方で現状の頑張りに肯定を示す花音母
が並びます。
この瞬間だけを切り取れば、まひるには『一番身近なファン』と『同じ目線でモノを語れる良き理解者』くらいの差があったと思います。両者に同じ絵を褒められた時の表情にもその差が現れています。
これが本当~~~~~~~~~~~~に共感度高くて………。 (こんなところで共感を覚えたくなかった)
第5話でも描かれていた通り、まひるはかなり人間臭いキャラクター造形です。花音母からの依頼を受けた時点でも
- イラストもっと上手くなりたいな…..
- 花音ちゃんは褒めてくれるけど……..
- ↑そんなコト悩める立場でもないくせに……..
- 仕事の依頼とか来たけど不相応じゃない…………?
- デッサン教室に通ったりしてるけど、この努力って意味あるのかなぁ…..?
みたいな思考がぐるぐる巡っていたんでしょう。
そんな状況で、明らかに自分より場数踏んでるであろう大人から「ちゃんと結果、出てるわよ」なんて言われたら、そりゃ花音母の依頼を受けたくなっちゃうよな…….。
まひるのモチベーション
一方、第7話でまひるは
「ずっと絵を描くのが苦しかったんだ。でも、最近はだんだん楽しくなってきて」
「誰かさん(花音)のおかげ」
「もっとすごい絵を描いて喜んで欲しい人がいる」
「私って意外と恩はちゃんと返したいタイプなのかも」
と繰り返し花音への感謝を口にしています。
第5話でも
「花音ちゃんの歌も、花音ちゃんのことも大好きだよ」
「私にもう一回、絵を描かせてくれてありがとう」
と大胆な告白を口にしています。チューもしてるし。
一貫しているのは花音のおかげでイラストを描くのが楽しくなったという点です。
イラストレーターとしては花音母に気持ちが傾きつつ、まひる個人としては変わらず花音の存在が絵を描くモチベーションになっていることは間違いありません。花音母の依頼を受けると決心した要因の一つには『花音からの期待に対して、自分の実力が追いついていない』という、自己肯定の低さに起因する危機感もあったのでしょう。
そして第8話の最後、まひるはJELEEのみんなに「花音母の依頼を受けること」を打ち明けます。
この際、まひるは以下のようなセリフを述べます。
「花音ちゃんと出会う前は自分のことが大嫌いだったんだ」
「けど今は、絵を描いてる時だけは、自分のこと、好きになれてきて」
「(JELEEで描けばいいじゃんと言われて)すっごく楽しかった。けど、違うの」
「私、もっと上手くなりたい。私の絵のこと、自分のこと、もっとちゃんと好きになりたいから」
これ、そもそも絵が上手くなりたいのは花音のためであるという前提の話が丸っと抜け落ちています。 まひる的には「自分がもっと上手くなったらJELEEのためにもなるし、花音ちゃんも嬉しいよね?」と花音が理解してくれているという思い込みがあったのでしょう。
しかし現実は
「ヨルは泳げないクラゲなんでしょ?」
と自身のコンプレックスに深々と突き刺さるセリフ(一番言ってほしくないセリフ)を、絵が上手くなりたいと思ったきっかけの人(一番言ってほしくない人)に言われてしまいました。
「想いが通じ合っていなかったという理想と現実のギャップ」と「大切な人から罵声を浴びせられたショック」がいっぺんに降り注いだら、そりゃこんな表情にもなるて……。
そもそもまひるは確固たる意志でクリエイティブを続けていたわけではありません。そんな状況でこんなこと言われたら、私なら多分イラスト描くの辞める……..。
第9話「現実見ろ」というサブタイ、最初は10万人達成で浮かれている花音に対して掛かっていると思っていましたが、もしかして「お前はどう足掻いても夜のクラゲだぞ」というまひるに対する嘲笑なのかもしれません。